「は? 君がツッコむべきところはそこじゃないだろ」
「そこ以外に見当たりませんでした」

ストップ、と間に手が入る。鼎の手。

「面白いけど痴話喧嘩は家に持って帰ってしてね」
「……申し訳ない」
「ごめんなさい」

口々に謝る。面白いの意味はよく分からないけれど。

わたしは握手してもらった手を組む。
痴話喧嘩をしたつもりはないけれど、久しぶりにこんなに会話をしたな、と思う。

この前、浅黄さんが酔って帰ってきた日以来だ。

「浅黄くん」

声が聞こえて浅黄さんがそちらを向く。わたしでも知っている大手企業の取締役が手を上げていた。