じゃあ、と口を開く理美。
「ここにはいない鼎ちゃんにかんぱーい!」
いない鼎に乾杯するらしい。わたしも釣られてグラスを持つ手を伸ばし、きーくんもまた然り。
かつん、とぶつかったグラスの良い音。
「松葉さんも結婚したんですよね。おめでとうございます」
まさかここできーくんに祝われるとは思っていなくて驚く。グラスに口をつける前に、お礼を言った。
「お相手がさっきの?」
「あの人だよね!」
「あー……うん、まあ」
濁して誤魔化そうとしたけれど、理美が辺りをキョロキョロするので不可能だった。当人は何やら楽しそうに星奈さんと話しているし。



