それから初めてそちらに視線がいった。

「おかえりなさい」
「ん」

何か用があるのか、と見ていると、浅黄さんが部屋に入る。
わたしの隣に腰を下ろした。アルコールの匂いがした。

「飲んできたんですか?」
「せったい」
「お疲れ様です」
「何見てんの」

酔っているのか、肩がぶつかる距離に来る。
テレビを所持しない浅黄さんが画面を見ている。

思えば、うちに初めて来たときもつまらなさそうにテレビを点けていたっけ。

「富山悠介っていう、俳優です」
「ふーん」

それで会話終了、かと思った。いつもの流れでは。

「好きなのか?」