ひたすら赤ん坊の寝姿のみ。
なにか狂気じみたモノを感じて背筋が冷たくなる。
同時に責められているように感じる。
別に疚しい事はしていない筈なのにだ。

「奥さん?」

横から覗いてきた彼が口を開いた。

「ああ」
「娘さん、だっけ。……可愛いなぁ」

ふっ、と柔らかい笑みを浮かべた晃はやっぱり綺麗だ。

「帰ろっか」
「やだ」

無意識というか本音が思わず出たというか。
一瞬ポカンとした後、彼は勢いよく吹き出した。

「はははっ、君って奴は。本当に変わらないねぇ」
「うるせぇよ」

ムッとはしたが、やはりまだ彼と居たいという気持ちは燻っていた。

「ほらそんな顔しないよ」
「どんな顔だよ」
「男前が台無しだな」
「……だったら帰るとか言うなよ」
「もう、君は……」

呆れたような、そして諭すように俺のスマホを撫でる。

「……今度は僕が誘っていいかい?」
「もちろんだ」

俺も誘うぞ、と続ければまた可愛らしく笑うものだからやっぱり返したくないと駄々を捏ねたくなる。

ほんの少し、奥歯を噛み締めて部屋を出た。