【短】センパイ、センパイ、センパイ。




教科書とノートの間に挟まっていたルーズリーフが、ひらり、廊下に落ちる。


それに気づかずに、歩いていった。


「……あれ?」


後ろで、そっと。

静かにルーズリーフを拾う、長い指。



「これ……」


「どうした?……って、それ!俺らの歌の詞じゃん!」



日差しに反射して、二本のヘアピンが艶やかに光る。


……ん?
俺らの歌の、詞?



「洒落たロマンチカになれないけど、下手くそでも赤くなろうぜ〜♪」



聞き覚えのある声がして、思わず足を止めた。


ま、まさか……!?



振り返ってみれば、案の定ことはセンパイと拓麻さんが私のルーズリーフを眺めていた。


「和香、どうしたの?」

「ご、ごめん!ちょっと先行ってて!」


やばいやばいやばい!!


頭の中は真っ白。

顔は真っ赤。

心の内は焦りや動揺で真っ青。


もう、とにかく、やばい!


とりあえず急いで二人のほうに近寄るが、足はガクガク震えてる。



「あ、あ、あの……っ!」


「ん?」


「そ、そ、それ……っ!」



初めてだ。

初めて、今。


好きな人と会話してる。