ライブは何回か見たことあったけど、緊張心が桁違いだ。
ライブの時は、手が届かないくらい遠くにいて、憧ればかりが募っていた。
でも、今は、こんなにも近くにいる。
視界いっぱいに、好きな人の表情。
ことはセンパイの透き通った瞳にも、私が映ってるのが、ちょっと不思議で信じられない。
「……キミ……」
わずかに瞠ってることさえ気づかないほど、いろいろといっぱいいっぱいだった。
あれ、呼吸ってどうやるんだったっけ。
「あ、これ?」
「は、は、はい!」
「もしかしてキミの……」
「す、す、すみませんでしたぁぁぁ!!」
拓麻さんはにこやかに接してくれたのに、恥ずかしさのあまり奪い取るようにルーズリーフを受け取って逃げてしまった。
チキンな私には、キャパオーバーだよぉ……。
おかげで二時間目は遅刻した。



