「和士さん」
「何だ」
「姉さんは、蓮と会ってから一度も笑ってない。
いや、表情を一切変えないって方が合ってる。
前に俺にだけ…笑ってって頼んだら、ほんの少しだけ笑ってくれた」
「それは、蓮以外にも人は居たか?」
「うん、倉庫でだったから」
「紫音はともかく、他人が居るとこで、今の栞が笑う事は無ぇだろうな
お前に笑ったってのも、感情の笑うじゃなく、ただ口角を上げただけだ」

紫音は目を見開いてショックを受けてる

「…何で、笑ってくれないの」
「詳しい事は知らねぇが、俺が聞いた時は『どうやって笑うんだっけ』って言ったな」
「!?」
「俺も笑ってくれる様に試行錯誤して、失敗して…聞いたんだ
『どうして笑ってくれない?何で無表情のままなんだ』って、そう言ったらな?
『関わりたくないから』って…」
「…っ」
「心を閉ざして、感情を消して…自分や周りを傷付けずに済む様にしてるのかもな」
「そんな…」
「悪いな、こんな話」
「大丈夫、俺が頼んだんだ。姉さんを誘拐した奴等は捕まってる?」
「いや…栞は逃げてきたらしい。だから、今は俺や楼が護ってる
自分が関わった人間には危害が及ぶ、そう考えてるから誰にも関わろうとしないんだ」
「今までの行動は、そういう事か…」


紫音side
1人で何もかも背負い込んで、誰にも関わらず…苦しんでる
俺は、姉さんを護りたい
どんな危険な目にあっても、もう…姉さんの側を離れたくない、俺が姉さんを護る

「和士さん」