紅葉色の恋に射抜かれて

「自分に負けるな、しっかり的を見ろ」


腕を組んで、女子団体チームの練習を見学していた葉山先輩が声をかけてくれる。


えっ、葉山先輩?


私は戸惑いながらも、言われたとおりに気を引き締めて的に集中する。

すると、再び葉山先輩の声が私の耳に届いた。


「お前ならできる、大丈夫だ」

「……っ!」


葉山先輩がそう言ってくれてるんだから、頑張らないと!


そう思って弦を離すと、矢は的に向かって飛んでいった……かのように見えた。

ほんの少しの誤差だった。矢は的枠に掠り、カンッとなんとも情けない音を立てて安土に刺さる。


 そんな……全部外れちゃった。


悔しくて、手のひらが白くなるまで弓を握りしめる。

後ろに立つ先輩たちの「また なの?」という呆れるような呟きが背中に突き刺さった。それどころか、的中率の記録をつけている部員たちからも「大会は無理なんじゃないか?」という声があがる。

本当に、このままじゃ足手まといになる。

それは誰かに言われなくても、自分がいちばんよくわかっていた。

ここ最近の的中率は一本あたればいいほうだったから。