――一年後、高校生になった私は今日も射場に立っていた。
男女含めて総勢五十人近くいる弓道部は、放課後に活動している。
入部して一ヶ月だけれど、私は弓道経験者だったので、同じ学年の新入部員とは違い、筋トレや『ゴム弓』といってゴムを弦に見立てて弓を引くという基礎練習をすっ飛ばし、実際に弓を射る練習をさせてもらえていた。
だからか、同年代の部員とはあまり仲良くなれず、先輩と話すほうが多かったりする。
「いいか、来月の六月九日から三年生最後の試合、県総体の予選がある。今から大会選抜メンバーを発表していくから、どんな結果であっても出場する仲間を全力で応援するように」
よく通る声でそう言ったのは、この弓道部の主将である葉山 弓月先輩。
部でいちばん強く、言葉数は少なくて厳しいけれど、みんなからは慕われている。
そして、高校見学のときに私が一目惚れした美しい射形の持ち主でもある。
「飯田、佐久間、真壁……」
葉山先輩が県総体の選抜メンバーを読み上げていく。
個人戦メンバーは呼び終わり、 残すところ団体戦のみになっていた。
弓道の団体戦は五人一組で合計二十の矢を射る。
また、立ち位置にも意味があって、一番目の的の前に立ち、最初の一射目をあてることでチームの流れを作る大役が『大前(おおまえ)』。
続いて、大前が外したときにカバーする 『二番立ち』 、いい流れなら維持し、悪い流れなら断ち切る『中』、トリに繋 つな げる『落ち前』 、プレッシャーが最も加わる『落 おち 』の五つがある。
男子団体戦の大前は予想するまでもなく、葉山先輩だった。
葉山先輩の弓道が見られるの、この大会で最後なんだな。
そんなことをぼんやり考えていると……。
男女含めて総勢五十人近くいる弓道部は、放課後に活動している。
入部して一ヶ月だけれど、私は弓道経験者だったので、同じ学年の新入部員とは違い、筋トレや『ゴム弓』といってゴムを弦に見立てて弓を引くという基礎練習をすっ飛ばし、実際に弓を射る練習をさせてもらえていた。
だからか、同年代の部員とはあまり仲良くなれず、先輩と話すほうが多かったりする。
「いいか、来月の六月九日から三年生最後の試合、県総体の予選がある。今から大会選抜メンバーを発表していくから、どんな結果であっても出場する仲間を全力で応援するように」
よく通る声でそう言ったのは、この弓道部の主将である葉山 弓月先輩。
部でいちばん強く、言葉数は少なくて厳しいけれど、みんなからは慕われている。
そして、高校見学のときに私が一目惚れした美しい射形の持ち主でもある。
「飯田、佐久間、真壁……」
葉山先輩が県総体の選抜メンバーを読み上げていく。
個人戦メンバーは呼び終わり、 残すところ団体戦のみになっていた。
弓道の団体戦は五人一組で合計二十の矢を射る。
また、立ち位置にも意味があって、一番目の的の前に立ち、最初の一射目をあてることでチームの流れを作る大役が『大前(おおまえ)』。
続いて、大前が外したときにカバーする 『二番立ち』 、いい流れなら維持し、悪い流れなら断ち切る『中』、トリに繋 つな げる『落ち前』 、プレッシャーが最も加わる『落 おち 』の五つがある。
男子団体戦の大前は予想するまでもなく、葉山先輩だった。
葉山先輩の弓道が見られるの、この大会で最後なんだな。
そんなことをぼんやり考えていると……。


