紅葉色の恋に射抜かれて

「もし、六実の言う仲間の足を引きずりたくないとか、そんな考えで弓を引いていれば、ただあたればいい……そんな雑な弓道になる。弓道は狙いさえ決められれば、作法なんて後づけでも的中するからな」

「それは、そうかもしれませんけど……」

「でも、六実の弓道は雑なところがない。真(まこと)の弓、つまり正しい射法で射られた矢は必ずあたる。そう確信させる力を六実の弓道からは感じるんだ」


憧れの先輩にそこまで絶賛してもらえるのは、うれしい。

だけど、葉山先輩の言う ことが正しいのなら……どうして、私は矢を外してしまうんだろう。

胸がきゅっと締めつけられるのを感じながら、私は二十八メートル先にある的を見つめて、ため息をこぼす。


「私に足りないものって、何なんでしょうか」

「それは、あたらない理由を聞いてるのか?」


袴に着替え終わった葉山先輩は衝立から出てくると、荷物を棚にしまって私の前に立つ。

こうして改まって向き合ったことは今までなかったので、緊張からか鼓動が早 まった。


だからといって、視線を逸らすのも失礼だよね……。


私は的を見つめるときと同じように、まっすぐな先輩の瞳にそわそわしながらも「そうです」と答える。


すると、先輩はふうっと息をついた。