「けんと!」



満面の笑みを浮かべる君を見て、俺はずっとこの笑顔を守りたかったのだと思い出した。


いつから守りたかったかなんてもう覚えていない。



「早く来てね!」



君は照れたのか俺に返事の余地を与えずに、くるりと前に向き直ってさっきより少し早歩きで歩いていく。


そのまま君はもう一度も振り返ることなく、ゲートの中へ消えていった。




この10年、かなり遠回りをした。

ずっと大事なことを先延ばしにしてきた俺の怠惰が原因なのだが……


それでも最後の最後で、君を捕まえられて良かった。


君のことがこんなにも大事だったんだと、気付けてよかった。







7月7日、七夕。



織姫と彦星が年に一度だけ会える日に、俺たちは織姫と彦星をやめたのだった。



fin.