こんな想い、小さなうちに摘み取ってしまわなければ。

 詩穂は笑顔を作った。

「でも、方向は一緒だから、途中までは一緒だよ。駅で私を見送ってくれたら、それでじゅうぶんだから」
「わかった。だけど、心配だから、家に着いたらメッセージを送ってほしい」
「……うん」

 詩穂は無言で歩き出した。蓮斗がすぐに追いつき、詩穂に並ぶ。

 数日前に救われた彼の優しさが、今はひどく苦しく感じた。