そうして、普段以上にたくさん食べて飲んで、デザートのマロンアイスクリームで締めくくった。

「はあ、おいしかった。お腹いっぱい」

 店を出て、詩穂は満足して言った。隣を歩く蓮斗も同じような表情だ。

「楽しかったな。あんなに笑いながら食べたのは久しぶりだ」
「私も」

 気の合う相手とおいしく食事をしてお酒を飲んで、お腹の底から笑って……。そんなふうに過ごしたのはいつ以来だろう……。

「須藤くん、今日は誘ってくれてありがとう」
「どういたしまして。俺も楽しかったよ」

 蓮斗を見ると、彼は優しく微笑んでいた。細められた目、弧を描く口元。詩穂だけに向けられたその笑顔に、胸がキュウッとなる。

(待って待って! 須藤くんは親切で連れ出してくれただけなんだから)

 予期せぬ胸の高鳴りに気を取られていたせいか、横断歩道と歩道の段差につまずいた。

「なにやってんだ、酔っ払い」

 蓮斗が笑いながら詩穂の右手を取った。キュッと握られて、ドキンとする。

「ま、楽しいと、ついつい飲み過ぎてしまうよな。家まで送っていくよ」

 蓮斗に言われて、詩穂は首を横に振って努めて冷静な声を出す。

「悪いからいい」
「気にするなって。二駅しか違わないんだから」