「確かに部下のことには注意してるけど、それとこれとは話が別だ」
「そう」
詩穂は気のない返事をして、パンフレットをめくった。アップになった俳優の顔は、やっぱり六年前よりも年齢を重ねているが、それでも逞しくてかっこいい。
ほどなくして明かりが消えて上映が始まった。
孤独なスパイが、殺人事件の目撃者となった女性を守るというストーリーだ。犯人は凶悪なマフィアグループ。目撃者の女性の口を封じようと、何度も襲ってくる。守り守られるうちに、目撃者とスパイの間に淡い恋心が生まれた。しかし、住む世界があまりにも違って、周囲がふたりの恋を許さなかった。
てっきりハッピーエンドになると思っていただけに、詩穂の目から涙が溢れた。
去って行くスパイの背中をじっと見つめる女性の姿が、スクリーンに映し出される。彼を求める気持ちと、諦めなければいけない気持ちがないまぜになった表情に、涙が止まらない。
バッグからハンディタオルを出して涙を拭っていると、蓮斗が左手を伸ばして詩穂の肩にかけ、そっと彼女を引き寄せた。詩穂は彼の肩に頭を預け、静かに涙を流す。
やがてエンドロールが流れ、明かりがついて上映が終わった。前や横の席の人が帰り始めるが、詩穂は立ち上がることができず、蓮斗の肩に頭を乗せたままにしていた。
「そう」
詩穂は気のない返事をして、パンフレットをめくった。アップになった俳優の顔は、やっぱり六年前よりも年齢を重ねているが、それでも逞しくてかっこいい。
ほどなくして明かりが消えて上映が始まった。
孤独なスパイが、殺人事件の目撃者となった女性を守るというストーリーだ。犯人は凶悪なマフィアグループ。目撃者の女性の口を封じようと、何度も襲ってくる。守り守られるうちに、目撃者とスパイの間に淡い恋心が生まれた。しかし、住む世界があまりにも違って、周囲がふたりの恋を許さなかった。
てっきりハッピーエンドになると思っていただけに、詩穂の目から涙が溢れた。
去って行くスパイの背中をじっと見つめる女性の姿が、スクリーンに映し出される。彼を求める気持ちと、諦めなければいけない気持ちがないまぜになった表情に、涙が止まらない。
バッグからハンディタオルを出して涙を拭っていると、蓮斗が左手を伸ばして詩穂の肩にかけ、そっと彼女を引き寄せた。詩穂は彼の肩に頭を預け、静かに涙を流す。
やがてエンドロールが流れ、明かりがついて上映が終わった。前や横の席の人が帰り始めるが、詩穂は立ち上がることができず、蓮斗の肩に頭を乗せたままにしていた。


