独占溺愛~クールな社長に求愛されています~

 蓮斗は詩穂の手を持ち上げて口元に引き寄せ、手の甲にそっと口づけた。手の甲に柔らかく温かな唇を感じて、詩穂はドギマギしながら言う。

「こっ、今度はなんのおまじないよ」
「おまじないじゃなくて、詩穂の記憶を上書きしたんだ」
「はぁ? だから、弘哉さんとはこの店に来てないってば! それに、弘哉さんは人前でベタベタするのとか、好きじゃなかったから……」

 人前で手をつなぐことすらなかったのだ。

「ダメだな。俺が思い出させてどうするんだ」

 蓮斗はため息をついてつぶやいた。

「もう、気にしないでってば。上書きがどうとか考えないで、須藤くんは普通にしててよ。お互い楽しい方がいいでしょ?」
「俺も楽しんでいいってこと?」
「当たり前じゃない。そっちこそ変な気を遣わないでよ」
「了解」

 蓮斗は言って、頬杖をついて視線を窓の外に向けた。なにか楽しいことでも考えているのか、その口元が緩んでいる。

 やがて注文の品が運ばれてきた。詩穂の前にマロンクリームのスフレパンケーキとアイスティーが、蓮斗の前にブレンドコーヒーが置かれる。

「わーい、おいしそう。いただきま~す」