「ここは何人かでアイデアを練り上げたり、ちょっと休憩したりするためのスペースね。気分転換にここで仕事をしても大丈夫!」

 真梨子が説明し、続いて正面を向いた。一面大きなガラス窓になっていて、二メートルくらいの幅で天井まであるパーティションに仕切られ、個室のようなブースが十ほど並んでいた。中にはデスクとチェア、本棚が一つずつ配置されている。デスクはパソコンが複数台乗ったものもあれば、書類が山積みになったものや、きちんと整理整頓されたものもある。

「あそこがアプリの開発に携わる社員のデスクね。開発者は社長を含めて九人いるの。それから、こっちにはキッチンスペースがあって、コーヒーが飲み放題、おやつも食べ放題」

 真梨子が笑いながら案内してくれたのは、左手のパーティションの奥だった。シンク、二つ口のガスコンロ、さらには冷蔵庫が置かれていて、こじゃれたマンションのキッチンのようだ。ガラス戸棚にはクッキーの缶やマカロンの箱、ナッツの瓶やカップラーメンなどが入っていて、カウンターの上にはコーヒーサーバーとたくさんのマグカップ、電気ケトルが置かれている。

「社長から、詩穂ちゃんは紅茶派だから紅茶をいくつか買っておいてって頼まれてね、そのときに自分用にタンポポコーヒーも買っちゃったんだ」