ずいぶん若く見えるのに、もう妊娠を考えているらしい。その内心の驚きが顔に出てしまい、そんな詩穂の顔を見て真梨子が苦笑した。

「あー、私、背が低いし童顔でしょ? だから子どもっぽく見られることが多いんだけど……こう見えて実は三十三歳なの」
「ええっ、同い年くらいかと思ってました!」

 詩穂はまじまじと真梨子を見た。どう見てもまだ二十代にしか見えない。それどころか年下かもと思ったくらいだ。

 真梨子は詩穂の背中をバシッと叩く。

「やーん、嬉しいこと言ってくれちゃう! 小牧さん、これからよろしくね! あ、詩穂ちゃんって呼んでいいかな? いいよね! 私のことは真梨子って呼んでね! じゃ、席に案内するね~」

 思いもよらずハイテンションな女性に迎えられたが、オフィスの高級そうな雰囲気に気後れしていたので、ホッとした。

 真梨子が先に自動ドアから中に入り、詩穂も続いた。真梨子は無人の受付デスクの前を抜けて、廊下をすたすたと歩いていく。“応接室”“会議室”などのプレートが貼られたドアの前を通り過ぎ、真梨子は一つの部屋の半透明のガラス扉を開けた。

「どうぞ」

 促されて一歩足を踏み入れたそこは、驚くほど広いオフィスだった。入ってすぐのところに、大きな丸いローテーブルが二つと、リラックスできそうなひとり掛けのソファがいくつも並んでいる。