蓮斗はぶっきらぼうに言って目を閉じた。詩穂はローチェストの上に視線を動かした。置き時計の針は九時半を指している。

「朝ご飯食べて帰る?」

 詩穂は蓮斗に視線を戻したが、返事の代わりに規則的な寝息が聞こえてきた。よっぽど眠たかったのだろう。

(心配してついててくれたのに……疑うなんて悪いことしたな)

 せめてものお詫びにおいしい朝食を用意しよう。

 詩穂は手早くシャワーを浴びて着替えて、遅い朝食の準備に取りかかった。普段ならトーストとインスタントのスープ、紅茶くらいで済ませてしまうが、今日は土曜日だ。おまけに蓮斗にお礼として振る舞うのだから、少しくらいは手の込んだものにしよう。

「といっても、作れるものは限られてるけど……」

 冷蔵庫を覗き、卵があったのでスクランブルエッグを、それにウインナーと残り野菜でスープを作った。食パンにトマトソースを塗ってベーコンとピーマンの輪切りを散らし、チーズをのせてピザトーストを焼く。オーブントースターがチンと軽やかに鳴り、チーズの焦げるおいしそうな匂いが辺りを満たす。

「あー、お腹空いた」

 時計を見ると、さっきから四十五分しか経っていない。寝ずにずっとついていてくれた蓮斗を、もう起こすのは気の毒な気がする。