「いや~、ありがと! おかげで前に進めそうだわ! 須藤くんって意外といいやつだったんだね~、うん、ありがとありがと」

 詩穂は酔いの回ったほてった顔で笑いながら、蓮斗の背中をバシバシと叩いた。

「いって~な。手加減しろよ、酔っ払い」

 そう言いながら、蓮斗は詩穂の髪をくしゃくしゃと掻き乱した。

「や~め~て、バカ」

 詩穂は蓮斗の胸に手を当てて彼を押しやろうとした。けれど、詩穂より二十センチほど背の高い彼は、酔っ払いに一押しされたくらいではビクともしない。

「大丈夫か?」
「大丈夫、大丈夫!」
「酔っ払いの『大丈夫』ほど信用できないものはないぞ」
「大丈夫だってば」

 蓮斗は詩穂を支えるように、左手で右肘を掴んだ。詩穂は感謝の気持ちを込めて彼を見上げる。

「ホントに大丈夫。今日、須藤くんに会えてよかった。飲みに誘ってくれたのが、須藤くんで本当によかった。ありがとう」

 詩穂が微笑むと、蓮斗は照れたように頬を掻いた。

「……よかった」
「須藤くんってこんなにいいやつだったのに、どうしてあんなに避けちゃったんだろう」
「それは飲みながら、俺が妬ましかったんだって白状しただろ」
「うわー、考えてみたら、私ってすごく嫌なやつだったよね。自分の一方的な感情で須藤くんを避けたりして。それに、腹が立つとかいっぱい言っちゃったし。私のこと、嫌いになったんじゃない?」