「え、そうなの? 私はそのたびに嫌なやつって思ってたのに」
「その須藤くんと……付き合い始めたのね?」
「うん」

 詩穂は彼と一緒に暮らし始めたこと、そしてさっきの出来事を話した。ジェニファーのことを聞いて、美沙の口調が険しくなる。

「なにそれ、最低! その女も最悪! だから、詩穂はここでひとりで泣いてたのね?」
「うん。帰るに帰れなくて……」

 美沙が思いやりのこもった顔で詩穂を見た。

「だったら……うちにおいでよ」
「え?」
「しばらくうちに泊まったらいいよ。部屋なら一つ空いてるから」
「すごく嬉しいけど……やっぱり小さなお子さんもいるし、ご主人にも悪いから、ほかの友達に連絡して泊めてもらうよ」
「遠慮しなくてもいいのに」

 美沙が詩穂の両手にそっと自分の手を重ねた。

「ううん。話を聞いてくれて本当に嬉しかった。もう大丈夫。それになにより、美沙と仲直りできてよかった」
「最初からケンカなんてしてなかったよ」

 美沙の優しい言葉に、詩穂はまた目頭が熱くなった。