以前は会社に泊まることもあった蓮斗だが、詩穂と暮らし始めてからは必ず帰宅している。それに、九時を回るときは先に食べるようメッセージを送ってくれるのだ。

 なにか会社でトラブルでもあったのだろうか。心配になったが、必死で仕事をしているかもしれないのに、まだ帰ってこないの、などとメッセージを送るのは気が引ける。詩穂はテレビを消して、バスルームに向かった。

 シャワーを浴びてパジャマに着替え、スマホを見たが、相変わらず彼からはメッセージも着信もない。詩穂はソファに座って膝を抱えた。じっとしていると、得体の知れない不安のようなものが湧き上がってくる。

(蓮斗、遅いなぁ……)

 まさか事故か事件にでも巻き込まれたんじゃ……?

 不安が募って悪い想像をしてしまい、慌てて首を左右に振った。念のためメッセージを送ろうとスマホを取り上げたとき、明るい電子音がしてメッセージが届いた。

 蓮斗からだ、とホッとしたのも束の間、メッセージの送信者は真梨子だった。

【こんばんは。遅い時間にごめんね。あの、社長はもう帰宅してるかな?】

 詩穂はすぐに返信を打つ。

【まだなんです。どうかされましたか?】

 蓮斗に用事でもあるのかと訊いたのだが、メッセージは既読になったものの、真梨子から返信はない。