クリスマスを蓮斗とふたりきりで過ごす。その楽しい想像に胸を膨らませながら、部屋に入った。蓮斗が帰ってきたときに熱々のグラタンが食べられるよう、『会社を出るときにメッセージをください』と彼のスマホに送った。手を洗って部屋着に着替え、エプロンを着ける。

 鶏肉とブロッコリーのマカロニグラタンを、あとは焼けばいい状態にまで仕上げ、ベーコンと野菜のコンソメスープ、レタスとトマトとキュウリのサラダを作った。あとは蓮斗からのメッセージを待つのみだ。

 時刻を見たら針は八時を指していた。スマホにはメッセージが届いておらず、蓮斗が気づいていないのかと思ったが、既読にはなっていた。ということはまだ仕事中なのだろう。

 詩穂はリビングのソファに座ってテレビをつけた。手持ちぶさたにチャンネルを変えて、旅番組に落ち着く。ぼんやり見ているうちに眠気に襲われ、ソファの上で体を丸めた。

 大きな笑い声がした気がして、詩穂はふと目を開けた。

 旅番組はいつの間にかお笑いのコンテストに変わっていた。舞台の上のお笑い芸人の動作を見て、どっと客席が沸く。

 詩穂は目をこすって壁の時計を見た。時刻は十時を回っている。スマホを確認したが、メッセージも電話の着信もなかった。