おもしろくなさそうな声が聞こえて、詩穂はくるりと体の向きを戻した。蓮斗が期待するような眼差しで見るので、詩穂は首を伸ばして彼の唇に軽く口づけた。

「……おはよう」
「おはよう」

 蓮斗がにっこり笑った。

「で、起きるの?」
「まだ詩穂を離したくない」

 蓮斗にギュウッと抱きしめられ、こうして彼の腕の中にいるだけで、満たされた気持ちになれる。

(ずっと……そばにいられたらいいのに)

 けれど、まだ付き合って一週間も経っていないのだ。重い女だと思われたくなくて、その気持ちは胸に留めておく。

 蓮斗の手が詩穂の背中をゆっくりと上下する。

「詩穂」
「なぁに?」

 詩穂は顔を上げて蓮斗を見た。蓮斗は淡い笑みを浮かべながら詩穂を見ている。

「幸せだな」
「私もだよ」

 詩穂は蓮斗の胸に頬をすり寄せた。

「なぁ」

 背中を撫でていた蓮斗の手が止まる。

「なぁに?」
「……一緒に暮らさないか?」

 詩穂の胸がトクンと音を立てた。嬉しくて顔がほころんでいく。

「詩穂?」