「え、ちょっと、ここ玄関……」
「ん~、そうだったかな」

 蓮斗は気のない声で言って、キスを繰り返す。このままでは廊下に押し倒されてしまいそうだ。

 詩穂は蓮斗のコートの腕をギュッと掴んだ。

「待って」
「なに?」
「料理がダメになっちゃうかも……」

 月曜日は買って帰ったアイスパフェが溶けて残念なことになってしまった。

「保冷剤も入ってるし、少しくらい大丈夫だ」

 すぐそばで詩穂を見つめる蓮斗の瞳は、熱を帯びて潤んでいて、ドキッとするような色気がある。そんな目で見つめられて、正気を保てるはずがない。

「蓮斗……」

 詩穂はとろりと目を閉じた。

 思う存分キスを交わして、ほてった顔のまま互いの額を合わせた。

「どうする……?」

 そう問う蓮斗の瞳は欲望を宿して艶めいていた。

「ど、どうするって?」
「詩穂は先に晩飯を食べる方がいい?」

 蓮斗の指先が詩穂のうなじをくすぐるように触るので、詩穂はもどかしい思いで息を吐いた。

「まだそんなにお腹は空いてない……かな」
「だったら、晩飯はもう少しあとでもいいな」

 その一言で、荷物を玄関に置いたまま、ベッドルームに向かうことになった。