「え?」
「私も同じことを思ったの」

 ふたりで顔を見合わせると、自然に笑みが浮かんだ。

 それから、車で彼の家に向かった。蓮斗が暮らすマンションは、川沿いの静かな地域にある。少し前にもタワー型高層マンションが建設された人気のエリアで、蓮斗はその一角にあるマンションの駐車場に車を入れた。モノトーンの概観がスタイリッシュだ。車を降りて、詩穂はマンションを見上げる。

「何階建て?」
「二十階」
「蓮斗の部屋は何階なの?」
「最上階」
「わー、いいなぁ」

 集合玄関は当然オートロックになっていて、蓮斗が鍵でロックを解除した。白いフロアはピカピカで、ガラス張りの壁を通じて外の景色が見える。エレベーターで二十階に上がって、蓮斗は詩穂を角部屋の二〇〇一号室に案内し、ドアを開けた。

「どうぞ」
「お邪魔します」

 詩穂はドキドキしながら玄関に足を踏み入れた。後から入った蓮斗が鍵をかけたかと思うと、後ろから詩穂をふわりと抱く。

「詩~穂」

 左頬に触れた蓮斗の手が、詩穂を右側へと向かせて、肩越しに口づけられる。

「詩穂とこうして一緒にいられて、本当に幸せだ」
「私もだよ」

 そう答えた詩穂の首から胸元へと、蓮斗の手がゆっくりと下りていく。