「うん、いいな。こんな感じで作ってみよう」

 その言葉に、詩穂はホッとして肩の力を抜いた。

「俺が試作してみるから、出来上がったら感想をくれ」
「えっ、社長が作ってくれるんですか?」
「俺じゃ不満か?」

 椅子に座ったままの蓮斗に見上げられ、詩穂はドギマギしながら答える。

「いえ、不満とかではなく、何人かで共同開発するものだと思っていたので」
「うちではよっぽどのことがない限り、開発は基本的にひとりでやっている。今回は小牧との共同開発になるわけだけど」
「え、共同開発だなんてとんでもない! 私なんてただの素人ですから!」
「あのな」

 蓮斗は小さく息を吐いて続ける。

「小牧は“ただの素人”のつもりで仕事をしたのか?」

 蓮斗の口調に厳しさが交じり、詩穂は背筋を伸ばした。

「いいえ、違います」
「俺も小牧がそんなつもりで仕事をするとは思っていないから、任せたんだ。小牧も納得して描き上げたものなんだろう?」
「はい」
「だったら自分を卑下するな。自分の仕事に責任を持つだけじゃなく、自信も持て」

 蓮斗の言葉に目が覚める思いがした。起業に失敗して、一緒に起業してくれた友達に迷惑をかけた。それからずっと、自分は役に立たない人間なのだと思っていた。そんな卑屈な考えに自分の思考が蝕まれていたことに気づく。