「……っ」

 蓮斗が驚いたように目を見張り、その反応に詩穂は真っ赤になった。

「あ、ご、ごめん。元気が出たらいいなって思って……」
「いや。元気になった。ありがとう!」

 蓮斗は詩穂をギュッと抱きしめた。しばらくそうしてから、ため息をつく。

「あー、離れがたいな」
「えっ、ダメだよ」

 詩穂が顔を上げ、蓮斗は小さく苦笑してゆっくりと体を離した。

「心を鬼にして詩穂を帰すよ。ホントは送っていきたいところだけど……」
「ダメ! そんなことをしたら私が来た意味がなくなるじゃない! それに西野くんがかわいそう」
「言うと思った」

 蓮斗は詩穂の頭をポンポンとして言う。

「わざわざ来てくれてありがとう。今日の埋め合わせは必ずするから」
「気にしないで」
「それじゃ」

 蓮斗は詩穂の頬にチュッとキスをしてドアを開けた。

「気をつけて帰れよ。家に着いたら無事に着いたって連絡して」
「了解です、社長」

 詩穂は笑いながら敬礼し、蓮斗に手を振ってオフィスを出た。