蓮斗が唇を離して詩穂の額に自分の額をコツンと当てた。

「詩穂」

 吐息交じりの声で呼ばれた名前が耳に心地いい。これまで何度か名前で呼ばれたことがあったが、今までで一番甘く響いた。

「詩穂の部屋で、アイスを食べてもいい?」

 蓮斗の声はかすれていた。熱情のこもった眼差しで見つめられ、詩穂は頬を染めて視線を落とす。

「う、ん」

 詩穂の返事を聞いて、蓮斗が腕を解いた。詩穂はバッグから鍵を取り出す。これから蓮斗との間に起こることを思って、手が震えた。

 詩穂の手に蓮斗がそっと手を添えて鍵穴へと導いた。ドアを開けて玄関に入り、靴を脱いだところで、後ろから抱きしめられる。

「友達でいるのはもう限界なんだ」

 耳元で蓮斗の声がした。ギューッと抱きしめられて、詩穂の鼓動がどんどん高くなる。バクバクと頭の中にまで響いて、詩穂はぼんやりとつぶやく。

「須藤くん、アイス……食べないの……?」

 蓮斗がふっと笑みをこぼした。詩穂をくるりと半回転させて、詩穂の顎をつまむ。

「アイスよりも詩穂を食べたい」