「私のせい?」
「どうしてそうなる?」
「だって……土曜日、私が須藤くんの厚意を無にしたから」

 蓮斗は右手で前髪をくしゃくしゃと掻き乱し、大きなため息をついた。

「そんなことで怒ったりはしない。ただ……腹が減ってるだけだ」
「ホントに?」
「ああ」

 まだ不機嫌そうだが、本人が言うのだからそうなのだろう。

「人間、腹が減ってはなんとやら、だもんね。じゃあ、たくさん頼んでね。私もいろんな種類の点心が食べたいから。今日は私が奢るし、遠慮しないでいいよ」

 詩穂が自分の胸を軽く叩くと、蓮斗がふっと笑みをこぼした。

「初月給も入ってないやつに奢らせられるかよ」
「だってこの前、居酒屋で奢ってくれたじゃない」
「今日は奢らなくていいから、代わりにしばらく弁当を作ってよ」
「うーん、お弁当はちょっと……。今日、早起きは無理だって思ったところだったし」
「なんだよ、使えないな~」

 蓮斗に不満げに言われて、詩穂は頬を膨らませる。

「うるさいな。朝五時半に起きるって結構大変なんだからねっ」
「そんなに早起きしてたのかよ。だったら、弁当はいいや。その代わり、馬車馬のようにこき使ってやる」
「えーっ、それもやだ」