その日、詩穂は真梨子に倣って弁当を作ってきた。ランチタイムになって詩穂は真梨子と一緒に休憩スペースに向かった。そこはキッチンスペースの隣にあり、窓際に三人掛けのソファが向き合って置かれている。詩穂は真梨子と一緒に左側のソファに座った。

「いただきま~す」

 真梨子がふたを開けた弁当箱には、ハンバーグにパプリカのマリネ、ブロッコリーの塩ゆでなどがキレイに詰められていた。彩りがよくカラフルでおいしそうだ。

「わー、やっぱり真梨子さんのお弁当、すごいです。私、今日は頑張って早起きしましたけど、継続できる気がしないですもん。真梨子さんは毎日作ってるなんて、尊敬します」
「だって、主人のお弁当も作ってるんだも~ん」

 真梨子は夫の話になると、相変わらず語尾にハートマークがつきそうな口調になる。

「ホント、ラブラブですね。そんなにいい出会いがあるなら、私もマッチングアプリ試してみようかなぁ……」

 蓮斗への恋心がこれ以上膨らまないようにするには、ほかに新しい出会いを求める方がいいのかもしれない。

「私が使ってたのを教えてあげようか?」

 真梨子がスマホを手に取ったとき、パーティションから蓮斗が現れた。そうして詩穂の弁当箱を覗き込む。