風呂から上がれば、佇む来栖さん。
横顔も、綺麗だな、なんて思ってみたり。

だけど、どこか、辛そうで、憂いを帯びた目をしていて。

やはり、過去の自分と同じじゃないか、と思う。過去の自分すら救えなかった俺は、来栖さんを救えるのだろうか。

優しい彼女を、醜い世界から救うことは出来るのだろうか。


「来栖さん、大丈夫?」

そんな、上辺だけ言葉を並べて、なにかしてやれるのだろうか。

「うん、……大丈夫」

壊れてしまう前に、今度こそ見つけてあげたい。



「来栖さん、俺の言ったこと覚えてる?」

鳴く蝉よりも鳴かぬ蛍が身を焦がす、なんて誰が言ったか。鳴かねば、愛は伝わらないじゃないか。

「何を?」
「好きになってもらうまで、諦めないから。だから、生きるの諦めないでね」
「……………そうだね」


守らないと、と思っているけど、本当に彼女のためなのだろうか。彼女を救うことによって、過去の自分を忘れようとしているのではないだろうか。
それでも、俺はきっと、救わないなんて選択肢は見つけられないんだ。