神代くんにジャージを借りた。
お風呂から出て袖を通せば、やはり自分の体よりも大きい衣服。
袖と裾をまくり、自分の長さに合わせようとするが落ちてきてしまうから、諦める。
「来栖さん、出た?」
扉の向こうから声をかけられる。
扉を開けて顔を覗かせれば、神代くんはドライヤーを持っていた。
「これ渡そうと思って………って、やっぱり大きかったよね」
ごめん、とか申し訳なさそうにす彼。
なぜ、申し訳なさそうにするのかが不思議だけれど、そういう所からさ彼がとても優しい人だということ再確認される。
「神代くんの家の洗剤、いい香りだね」
落ち着く、優しい花の香り。
「そ、かな…。それ、おばあちゃんが好きな香りなんだ」
「そうなんだ」
そこで会話が途切れてしまう。
神代くんはいつもしているピンを外し、前髪が目にかかっている。
「ねぇ」
「あのさ」
お互いがハッとして口を噤む。
「神代くんからいいよ」
「ありがと。………なんで来栖さんは俺の告白をOKしてくれたのかなって。だって、俺のこと好きってわけじゃないでしょ?」
そう言って少しだけ悲しそうに笑ったのを前髪の間から覗く瞳が語っていた。

