「ねぇ、本当に借りてもいいの?」
「むしろ俺のでいいのか不安だったけど…」

一晩寝るにはずっと制服のままではいられない。

「ちゃんと洗濯してるけど匂いとか気になったら遠慮なく言って」
そう言ってジャージ一式を手渡す。すると、来栖さんは言いづらそうに口を開いた。
「……あの、下着は、」
下着については何も考えてなかった。
さすがに女物の下着なんて家にないし、…由里ならあるかもしれないけど。ばあちゃんの私物は全部病院に持っていったし…。
頭をフル回転させる。すると、洗面所にあるものが置いてあることを思い出す。
「あ、…乾燥機があるから使っていいよ。…短時間で乾くか不安だけど」

そう言うと彼女申し訳なさそうに目を伏せる。だけど、それも束の間。ゆっくり微笑んだ。
「…何から何までありがとう。今度お礼させて」
「いいよ、気にしないで。むしろもっと頼ってもいいから」


付き合ってるんだし、と言ってみる。



「…そうだね、ありがとう」
そう言って風呂へ向かう彼女の後ろ姿を見つめる。

否定されるかと思いきや突然の肯定。
あぁ、また意識してしまう。
自分ばかり、来栖さんのことを好きになっているような。



きっと、彼女は俺のことを好きで付き合っているわけじゃない。

その事実を思うだけで、胸が痛くなった。