誰かと食べる夕飯なんて久しぶりだった。
幼い頃はみんなで食べていたけど、気づけば私と家族の間にだけ亀裂が入っていて、踏み込めない状態になっていた。
「……今のこの状況って、夫婦みたいだよね」
一緒の食卓を囲んでさ、と楽しそうに笑う彼。夕飯を食べる前の無理な笑顔よりも心和む笑顔。
きっと、暗くなっていた私の心中を察してくれたのかもしれない。いや、もしかしたら何も考えず単純にそう思っただけなのかもしれないけれど。
「そうだね」
私もつられて笑ってしまう。神代くんの笑顔にはそういう魔法があるのかもしれない。暗くなっていた心が暖かくなる。
「……っ」
「神代くん…?」
「…俺が食器洗うから!」
そう言って食器を持ってキッチンへ向かう神代くんの耳はほんのり赤くなっていた。

