「……美味しい!」
「それなら良かった」

肉じゃがとご飯とお味噌汁。それと、せん切りされたキャベツにミニトマト。
たったそれだけの料理だけど、祖母が入院して1人になった俺からしたらすごく豪華な夕飯だ。

「神代くんはいつも何食べてるの?」
「んー、買ってくるかな。休日は自炊もするけどほとんど惣菜」
「栄養偏るよ」
「…そうだね、自炊増やそうかな」
作れないわけじゃないけどやっぱり時間が無いし、1人のためだけに作るのもどうかと悩むところがある。

「…来栖さんは?」
「私は…たまに余り物で作るよ。基本食べないから」
その代わり昼食は大きめのパン食べてるけどね、と。
「料理上手なのに…もったいない」
そして、ハッとするが、もう遅い。
「私の分の食材は省かれててね、買うのも面倒だから食べなくていいかなって」
「ごめん」
「いいよ、気にしないで」

気にしないで、と言ってくれるけど、どうしても気にしてしまう。

「神代くんって、優しいんだね」
「……優しくないよ」
「優しいよ」

俺は優しくない。
誰も、守ることなんて出来やしないのだから。