俺は陰陽師の家に産まれた。妖力が強く妖怪
がくっきりと見えていた俺は小学一年から妖
を滅するための扇の修行を余儀なくされた。
初めて滅した妖怪は切なそうに泣いていた。
小学3年のとある橋の上のことだった。
「ひっく、ぐすっ」
俺は思わず声をかけた。
「どうしたの?」
振り向いた妖怪の顔は左半分がなくなってい
た。
「ひっく、ひっく、ぐすっ」
まだ泣いている。しかしそれは泣き声から笑
い声へと変わっていった。
「あははははは!!あーーっ!はははっ!!
!」
怖くて足がすくんだ。でも、やらなければや
られる。俺は扇を構えた。
「薄紅藤は私の心を照らし、花を咲かせる。
すべては君の心なり。」
そう歌いながら舞うと、暖かな光がその妖怪
に満ちた。花が咲いているようにも見えた。
「ありがとう。これでやっとお空にいける。
ありがとう。」
あとから聞くとその妖怪は橋の名のある主だ
ったようだ。それからちょくちょく妖を封じ
てくれや成仏させてやってくれという依頼が
来るようになった。