ガタンゴトンガタンゴトンガタン……

電車に揺られ、久しぶりに見る外の景色を、特に何かを思うことも無く、眺めていた。

「あの頃」の私にはもう戻れない。
もう、戻らない。

だから、こんな景色を心に留めておく必要もないわけで、ガヤガヤうるさい電車の中で睡魔と戦っている最中なのだ。

やっと目的地の明久高校に到着だ。という所で丁度、睡魔との戦いに負けたところで、危なく乗り過ごす所だった。

さすがに、転校初日に遅刻はやばいでしょ。そのくらいの常識は持ち合わせている。

校門の前に立ち、礼儀正しく「よろしくお願いします」と頭を下げた。

その、お願いします が、これからの学校生活が楽しいものになることを願っているのか、勉強する場所として教えてください、というものなのか、はたまた私がやろうとしている事が、成功するためのお願いなのか、自分でも分からないが。

なんて、考えてるうちに、もう玄関まで来てしまった。

ここまで来たら、もうさっさと行ってしまおう。

ガラガラガラ…

「おはようございます。今日からこの高校に転校してきた、磯村美桜と言います。よろしくお願いします。」

この高校は私の住んでいる、七星寮
から結構遠くて、管理人さんが(あ、あのうるさい人ね)いいの?って聞いてきたのよね。もちろん、聞く耳を持たなかったけど。

職員室のドアを開けると、クーラーがききすぎてて、夏なのに寒いと思ってしまった。その後、独特のコーヒーの匂いが鼻を刺激する。コーヒーは昔から苦手なのだ。

「あら?あぁ磯村さんね。おはよう。随分早いのね。」

「転校初日に遅刻はしたくないですし」

「いい心がけね。毎日続けてくれたらいいんだけど。まぁ無理よね!あははっ」

何だこのババァ?いきなりどうしたんだよ。

「あの…大丈夫ですか?よろしければ病院に行きます?」

「なっっ!行くわけないでしょ!!ふざけているの、あなた!」

「では、私教室に向かいますね。あ、1人で行けますので。」

こんな奴相手してられない。
確か、2階だったはずだけど。
もう、ホームルームの時間だし早くしないとね。

ガラガラガラ…

「あ、磯村さんね!ちょうど良かったわ〜。皆さん〜今日から転校してきた磯村美桜さんよ。磯村さん挨拶してちょうだい?」

喋り方が好ましくないが、どうせ授業を聞く訳でもないので気にしないでおこう。ぱっと見三十代ってことろで、若くて、ミディアムの髪がサラサラしていた。
顔は嫌いじゃないかな。

「えっと。今日転校してきた磯村美桜です。よろしくお願いします。」

「早速しつもーん!」
「彼氏はァ?いるの?」
「めっちゃ美人じゃん!付き合ってくださーい!‪‪❤︎‬‪‪」
「えー!はやくね!笑笑」

ちょっとちょっとうるさいわね!

「みんな!静かにしなさい。磯村さん困ってるでしょ。んーじゃ、1時間目自習にするから。その時に質問しなさい。磯村さん。仲良くなってあげてね!みんないい子だから!」

うえーマジかよww。まぁこれであいつの情報でも集めるかな。

キーンコーンカーンコーン……

「伊藤先生ナイスぅー〜!」

どうやら担任は伊藤らしい。

「ねね!まずさ!美桜ちゃんが自己紹介してよ!その方が効率良くない?」
「いいね!さっすがー。マリア頭いいぃー!」

いやいや、絶対頭悪いでしょ。
なんかもう雰囲気を醸し出してるんだけど。
多分マリアと呼ばれた女がカーストトップと言ってもいいだろう。

「うん。いいよ。私は磯村美桜です。
えっと、好きな色は…黒かな?服とかも黒とか白を着ることが多いです。
さっき質問された,彼氏についてですが、今はフリーですね。前好きだった人は…ちょっと言いにくいですね。
えと、誕生日は12月14日です。血液型はAB型です。
あとは、質問お願いします。」

「好きなタイプは!」

「理想は高身長イケメンです。けど、無理だと思うので、笑顔が可愛い人が好きですね。」

「高身長イケメンとか!‪w‪w」
「女子は言うこと同じだな!」

悪いか!イケメンは誰でも好きだわ!

「ってか、敬語やめなって!美桜って呼んでいい?」

「そうだね!いいよ!美桜で!好きな呼び方でもOK!」

あれ?話してたら結構楽しくなってきたかも?

「じゃあ、美桜!ね!ってか今7月だよね?時期おかしくない?」

あーあ、、楽しかったのに。本来の目的思い出しちゃった。

「ふふっ、それはね…。とりあえず、このクラスにさ、神成陽向って居るよね?その子呼んで。」

「え?あぁ、うん。陽向ね。ちょっと待っててぇ?多分トイレ!」

バタバタバタ…

「連れてきたよ〜!」

「なになに?私呼ばれたの?え?ちょっとぉーちゃんと説明してよぉ!」

全然変わってないな。まぁ変わってたら困るよね。



「久しぶりだね。陽向」



「え…。え?う、そ?みお…う…?」

私に気づいたらしく、呆然と立ち尽くし
ている。

「あ、あ…。な、んで、いる…の…よ」

「覚えててくれたんだね!すっごい嬉しい!これからよろしくねぇ?」

「ちょっと、知り合いなの?あんたら?勝手に話進めないでよね。」

マリアが、口を出してきた。
勝手に話進めないでよねって言われてもな。マリアに関係ないんだから、しょうがないっしょ?

「うん。そうだね、ただの知り合い。」

「し、知らないっ!誰よ、あんた!私は美桜なんか知らないよっ!」

「まぁ、陽向がそうしたいなら、それでいいや。でも、私の自己紹介聞いてないのに、名前知ってるんだね。ふふっ。」

「い、や…ちが、うし…。み、みんなが言って、たから…ね?言ってたよね?」

みんな黙っている。が、マリアが

「話が脱線してるわよ。で?なんで、こんな時期に転校したのよ?陽向が関係あるわけ?」

話が戻り、ホッとした様子の陽向。
残念だったね。これから、あんたは地獄へ一直線なんだよ。

「そうだね。ごめん!

私が転校してきた理由は…




『 神成陽向、あなたに復讐するためです。』





これからよろしくお願いします。」