「せんぱ~い?」

目の前で手を振るけど、真ん丸に見開かれた先輩の瞳は動かない

どうしたのかな……

「はああぁぁぁ~」

あれ?いきなりしゃがみ込んでしまった

って、傘!放り出さないでっ!!

「先輩!濡れます!傘、傘!!」

「っあああ~~、ごめん…」

慌てて立ち上がった先輩は、一瞬私を見てすぐに顔を背ける
私が拾って差しかけた傘を掴み、逆に私にだけ差しかけるけど
こっちは見ない

――耳が赤いのは気のせい?


「………か?」

ぼそぼそと何か話しかけられた
でも聴き取れなくて、何ですか?って聞き返すと

「明日、空いてるか?…っその、急だけど!」

ひと息吐いてから真剣な顔で尋ねられた