「あれ?チャー?」 自宅の最寄り駅、改札を出て見上げた空からは、大粒の雨が降りしきっていた 急用と早上がりした後輩の顔を思い浮かべ、思わず舌打ちした時にかけられた声は 「……北澤先輩!」 この春、卒業したばかりのひとつ上の先輩で、 大学入学以来、私がずっと片想いだった人のもの 「ひさしぶり」 笑うと糸のように細くなる目元と薄くて大きな口が弧を描く 3年間、ずっと見ていた、全く変わらない先輩の笑顔があった―――