「今日席替えだよ!大賀(おおが)君と近くになれると良いね!」

「しぃ……!声、おおきいよ……」


昇降口できょろきょろと頭を動かす。
よかった。まわりに誰もいない。


「もう……」と笑う私は、たぶん。
去年よりずっと“普通の”女子高生に似てきたと思う。



だから大賀君と同じクラスになったのが、このタイミングで助かった。

そう、思ってしまうほど。
抱えていた憧れは、じゅうぶん恋に変わっていた。



――2年7組。


教室のドアに手をかける。


「えぇー!!本当!?」


ドアの向こうから飛び込んできた甲高い声。思わず手をひっこめた。


「どうしたんだろ?」と小麦色の手が伸びる。栞ちゃんがスタンッと、勢いよくドアを開いた。


教室の真ん中。女子の大半が集まって出来た輪。華やぐその後ろ姿はザ、フツウのジェイケイ。


「なになに?何の話ー?」



その輪に臆することなくはいってしまう栞ちゃんは、彼女たちと同種。


私とは違う。
あの輪を、遥か彼方を眺める目で見ている私とは、全然。


「え?だれが?」

栞ちゃんの声にハッとした。


「大賀が!彼女と別れたかもしれないって!」