少しして大賀君は、「葉由んちはどっち?」と立ち上がった。


「あっち」


指さす方に歩いていく。あと三分とかからない。


「家の人、もう帰ってきてる?」


「ううん、まだだと思う」


「そっか。家ついたら、家族が帰ってくるまでちゃんと安静にしときなよ」


「うん」



もう終わっちゃうんだって思ったら寂しくなる。
歩く速度を落としたせこい私に、大賀君はわかりやすいくらい、合わせてくれた。


さっきのお参りで、蓮に言ってしまった。


大賀君っていう好きな人が出来てしまったって。


蓮に聞こえていたとしたら、怒るのかな。



……怒らないか。蓮は、私にすごく甘かったから。


きっと「そうなんだ。がんばって」くらい、言ってしまうんだろうな……。思っていなくても……。


蓮のことばかり考えていたら、もう、家に着いてしまった。


「ありがとう大賀君」


「いえいえ、無事着けてよかった」


「寄ってく?」


「まさか。帰るよ」



あっさりと手を振られてしまった。なんだか、すごく恥ずかしい。


夕日に向かって歩き始めた大賀君の背中を、私は、いつまでも見ていた。