そんなことを考えながらしばらく蹲っていると、さっきまでよりも少し頭痛が和らいできたような気がした。
今のうちに、仕事を片付けてしまわなくては……
立ち上がろうとしたとき、ちょうど複数の女子社員たちがトイレに入ってくる足音が聞こえた。
「ねぇ、秦野さん。さっき長いこと碓氷さんにつかまってたけど、今日の夜大丈夫?」
メイク直しにでも来たのだろうか。
トイレのドアを挟んだ向こうにある洗面台のほうから、ひとりの女子社員が話す声がした。
「うん。このあと行ってくる新規の取引先への訪問が終わったら、そのまま合流できると思う」
「それならよかった。もし遅れそうなら連絡して」
「わかった」
聞こえてくる声から、どうやら秦野さんもいるらしい。
「だけど、今日の飲み会に秦野さんも参加するなんてびっくりしたよ。いつもあたし達が誘う合コンっぽい飲み会は断るじゃない」
「そうなんだけど。たまには行ってみようかなーって」
彼女達の会話を聞いているうちに、和らぎつつあった頭痛がまた酷くなってきた。