「すみません。よろしくお願いします」

軽く一礼してから自分のデスクに戻っていく秦野さんを見送ってから、片肘をついて手のひらで目を覆う。


「大丈夫ですか?」

しばらくそうしていたら、デスクの向こうから声をかけられた。

目を覆っていた手を外してゆっくり頭を持ち上げると、広沢くんが立っていた。


「大丈夫ですか?碓氷さん」

「大丈夫よ。何?」

何か相談事か、それとも資料のチェックか。

広沢くんが用件を話し出すのをじっと待っていると、彼がちょっと困ったように眉根を寄せた。


「いえ。そういう意味じゃなくて……」

広沢くんが何を言いたいのかよくわからない。

なかなか用件を話し出さない広沢くんのことが待ちきれなくて、私は深いため息をつきながら額を押さえた。


「ごめんなさい。ちょっと席を外すわ。あとでゆっくり話を聞かせてくれる?」

「碓氷さん……」

慌てた様子の広沢くんに呼びかけられたけど、このままじっと座って待っているのはもう不可能だった。