「これから、仕事のことで相談したいこともあると思うんで」
「あると思うって?」
「仕事のことで悩んでる部下の相談に乗るのは、上司の役目になりませんか」
広沢くんが小首を傾げて笑う。
「相談があれば乗るけど……何か悩んでるの?」
何かを企んでいるような笑みを浮かべる広沢くんをジッと見つめると、彼が小さく肩を竦めた。
「わかんないですけど、これから悩もうと思います」
「ちょっと言っている意味がよくわからないんだけど」
広沢くんとのやり取りに少し苛立つ。
けれど、彼はそんな私を愉快げに見ながらスマホを差し出してきた。
「教えてもらっていいですか、連絡先」
「どうして?」
「教えてくれないなら、碓氷さんは全然部下の相談に乗ってくれないっていろんなところで愚痴ります」
「別に今さら、誰かに悪く言われたって痛くも痒くもないけど?」
くだらない脅しをかけてくる広沢くんを、腕組みして軽く睨む。



