その瞳に涙 ― 冷たい上司と年下の部下 ―



買い物袋と一緒に引っ張られて、広沢くんとの距離がグッと縮まる。

本当にただ驚いて、呆然としながら視線を上げると、広沢くんが苦々しげに私を見下ろしていた。


「今、ものすごく不愉快な気持ちになってます。だけど……これは、碓氷さんを送っていくお礼として貰うってことでいいですか?」

「ん?」

広沢くんが何を言っているのかよくわからない。

全然酔えないと思った飲み会だったけど、理解力が多少鈍るくらいには酔っているのだろうか。

考えながら首を傾げていると、広沢くんが怒ったように眉根を寄せた。


「家まで送ります」

「え?」

あっという間に広沢くんに手首をつかまれてしまった私の判断能力は、やっぱりお酒のせいで少し鈍ってしまっていたんだと思う。

広沢くんと同じように、二次会に参加しなかった会社の同僚の誰かが見ているかもしれないのに。

手を引いて駅のほうに歩き出す広沢くんを、私は彼の上司としてきっぱりと止めることができなかった。

もし誰かに見られていたら。

それは私の過失だ。