その瞳に涙 ― 冷たい上司と年下の部下 ―



そんな様子を俯瞰で見ながら、うちは人間関係の良いなかなかいい部署なのかも、なんて思う。

2時間ほどして歓迎会はお開きになり、誰かが広沢くんに向かって「二次会は?」などと言い始めた。

私はそっと立ち上がると、秦野さんのそばに行って財布を取り出した。

店の料理はコース予約だったので、予め会費が決まっていたのだけれど……

それよりもいくらか多めに秦野さんにお金を払う。


「これ。お釣りはいらないから、二次会の足しにして」

「え、でも……」

「お疲れ様」

私にお札を握らされて戸惑う秦野さんにそう言うと、まだ盛り上がっている同僚たちに気付かれないようにそっと店を出た。


どこかコンビニに寄って、スイーツでも買って帰ろうかな。

居酒屋から最寄りの電車の駅に向かって歩きながらぼんやり思う。

周りの空気が冷めないように気遣いながら過ごしたから、なんとなく物足りない感じなのだ。