「そう?ありがとう……」 広沢くんにつかまれた手首に視線が落ちる。 咄嗟のことで、不覚にも小さく胸が騒ついた。 冷静に、そっと触れられた手を払うと、広沢くんが何か言いたげに私を見てから、一歩後ろに引いた。 「そろそろ始まるんで、行きましょうか」 「そうね」 広沢くんに向けられた眼差しに、なんとなく気まずさを覚えながら、私は彼についてオフィスを後にした。