「それはつまり、特別な予定はないってことですよね?」

「……」

いつもなら絶対に言葉で部下に負けたりしないのに、広沢くんの有無を言わさない口調の問いかけをうまく交わすことができなかった。

黙り込んでしまった私を見下ろす広沢くんの口角がゆるりと上がる。


「じゃぁ、この日は空けといてくださいね。残業も定時を超えて1時間以上は禁止で」

なんの権限があるのか知らないけれど、広沢くんは強い口調で私に指図をして、私が不参加にチェックを入れた出欠表を参加の方に勝手に修正した。


「あ、ちょっと待って。勝手に……」

「じゃぁ俺、これから取引先との打ち合わせに行ってくるんで」

引き止めようとすると、広沢くんがにこりと笑って私を交わす。


「碓氷さん、すみません。このチェックお願いしてもいいですか?」

広沢くんが立ち去ろうとするタイミングを見計らってやってきた他の社員が、私のデスクに歩み寄ってくる。