「俺、秦野よりも碓氷さんのほうがずっと興味ありますよ」
しばらくして口を開いた広沢くんがそんなことを言うから、思わず視線を揺らしてしまう。
8つほども年下の部下のくせに。
いきなり何を言い出すかと思えば……
「広沢くん、おばさんには興味ないんでしょ」
以前彼がふたつ以上年上の女には興味ないと言っていたことを思い出して、心の動揺を悟られないように笑いながら茶化す。
けれど、広沢くんは真顔で私のことをじっと見てきた。
「基本的には。でも、碓氷さんにはすごく興味が湧いてます」
「新種の動物でも観察するような感覚で?」
笑いながらまた茶化すけど、広沢くんは私の言葉などどうでもよさそうに跳ね除けた。
「いや。どんな状況でも強く気丈に振る舞ってる碓氷さんのこと、いつか泣かせてみたいなって」
「は?」
広沢くんの口から飛び出した言葉に唖然とする。
「俺、Sなんで」
そんな私を見て、広沢くんがニヤリと笑った。



