「確かに最近呼ばれることは多いけど、毎回同じことを注意されてるわけじゃないから」
「でも俺に何のお咎めもないのは、碓氷さんが全部引き受けてくれてるからでしょ?」
「さすがに私も全部引き受けられないし、注意を受けているのは私に関することだけよ」
私がそう答えると、広沢くんは不服そうに顔をしかめた。
「どうして、ひとりで全部背負うんですか?強いんですね、碓氷さん……」
「当たり前でしょ。あなたの倍以上社会人やってるんだから」
苦笑いを浮かべてそうに言ったら、広沢くんはますます不服そうな顔をした。
「ちょっとくらい、弱ってるような顔でも見せればいいのに……」
広沢くんが私を見下ろしながら、独り言みたいにつぶやくから戸惑った。
「職場でそんな顔見せられないわよ。もういい大人だし」
肩を竦めて見せると、広沢くんがまだ私の手首をつかんだままでいる手のひらにぎゅっと力を込めた。



